日本の刑事裁判の有罪率

 最近,カルロス・ゴーン事件に関連して,「日本の刑事裁判の有罪率が98~99%というのはおかしい。」という指摘がよくなされています。マスコミ等の論評でも同様のものがありますし,私も知人等からよく聞かれます。
 この問題は,以前から繰り返し指摘されてきたことでもあります。しかし,この問題は,主にその国がどのような刑事手続システムを採用するかということと深く関連しています。例えば,アメリカでは,ある程度ラフな証拠で起訴して,裁判で有罪か無罪かを決するシステムになっています。これに対し,日本では,検察官が起訴・不起訴の判断をする時点で,実質的に裁判官と同じ判断をし,検察官が証拠上,「有罪に間違いない。」と心証を得たものだけを起訴するシステムになっています。ですから,実際の裁判ではほとんどが有罪になり,偶に検察官の起訴判断が間違っていたり,捜査がまずくて証拠不十分だったりしたものだけが無罪となる訳です。これは,日本の社会では起訴された場合,仮にその後無罪になったとしても社会的に受けるダメージが大きく,逆にアメリカではそれほどでもないという社会的背景があるからと思われます。結局,その国がどのような刑事手続システムを採用するかの問題であり,有罪率だけで良いか悪いかの判断はできません。私は,30年間検事をやった経験等から,日本の刑事裁判システムの方が人権という観点からも良いのではないかと思っています。日本の刑事裁判は,疑わしいだけのものは起訴時点でかなり絞られますし(逆に犯罪者を逃している可能性はありますが・・・。),諸外国と比べて,とても緻密に事実認定をやっており(若いときに研修で外国の裁判を傍聴させてもらったことがありましたが,とてもラフでした。),裁判を受ける被告人側としても,その点は安心だからです。

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